微分調性のススメ & レイヤーエフェクトとしての微分音
- 2016/05/23
- 12:47
今回、ちょっと専門的な要素の強い記事となっています。面倒な方は、後半のレイヤーエフェクトとしての微分音についてだけでも読んでいただければ幸いです。
微分調性とは
先日よりmicrotonal(マイクロトーナル)、 xenharmony(ゼンハーモニー)と言った分野の翻訳を本格的に始めましたが、それらの訳語としての日本語がまだしっかりとは確立されていないのではないかと感じました。
microtonalの日本語が厳密には微分音とはならないのではないかとは、以前より微分音のメモ帳を運営されている清川隼也氏も指摘されていたのですが、この際私自身が作曲や翻訳で使用するための、微分音関連の訳語をきっちり定めおきます。
ここでの翻訳にも今後混乱がおこらないように。
昨日Jacob Anthony Bartonが熱心に語るゼンハーモニーという言葉について、訳注で以下のように述べました。
(Xenhamony)とはIvor Darregによるmicrotonalのための用語。
古代ギリシャ語の xenia"hospitable," "xenos"(foreign)という言葉から採られているそうです。
microのtonal(調整)という意味合いが含まれないこともあり、こちらの言葉が好まれることも多いです。
日本語の微分音は厳密にはmicrotoneには当てはまっても、microtonalには当てはまらないかもしれません。
microtonalでは微分調性という意味を含みうるため、伝統的な調性内における微分音の使用が、microtonalと
呼べるのかは、議論の分かれるところでしょう。本ブログでは、所々で一番相応しいと判断した訳語を使用します。
この"微分調性"という言葉はこれまで私が使用する以外で見たことはなかったのですが、微分音を用いた12平均律以外の調性という意味で使用しています。ハ長調、Cのキーの中にD♭m7(50cents up)といった和音がコード進行、機能和声として組み込まれている場合、これはもはや微分調性と言えるでしょう。微分音の使用が旋律だけでなく、調性にも影響を及ぼしますから。
ちなみに12平均律以外の平均律(1オクターブを12以外の均等な数に配置した9平均律、15平均律や17平均律など)はn平均律と日本語訳で定義されており(ですよね、清川さん??)、これは前述の清川氏によるものです。微分調性の場合は平均律であるとは限りませんので、単に微分ハーモニー的な和声システム、コード進行を持った調性という意味であり、microtonalとはどんなtonal(調性)なのかと問われると、微分調性です!というわけです。一つの平均律の楽曲の中で突然局部的に純正律やらピタゴラス音律が出てくるとか、それがハリーパーチの43音階でもよいのですが、そういうものは微分調性的ととらえられるかもしれませんね。いや、これは微分調律的、かな?
なおゼンハーモニーという言葉は、調性の定義云々やその数学的な部分よりは、響きが異質で、非西洋的であるという、あえて言うならば人文学的な意味合い、憧れが大きく由来となっているでしょう。
レイヤーエフェクトとしての微分音
私自身の楽曲を例にあげて恐縮ですが、微分音を西洋の調性、コード進行に簡単に取り込むことを目的として考案したIceface Tuning(♯や♭の音を全て50centsあげて経過音、装飾音として使用する)は基本的には12平均律といった調性内での使用を前提に提唱しましたので、ゼンハーモニック(名詞であるゼンハーモニーの形容詞)ではあっても、マイクロトーナル、微分調性的とはあまり言えないということになりますね。
Iceface Tuned Piano 微分音を簡単に楽曲に組み込む方法
それに対して
Microtonal Arpeggio for 2 Pianos (12+17 Tone Equal Temperament)2台のピアノのための微分音アルペジオ
こちらの楽曲は12平均律と17平均律が同時に奏でられるため、少なくとも17平均律の部分はマイクロトーナル、微分調性であり、かつn平均律であるということになります。全体的にはマイクロトーナル、、微分調性の楽曲となるでしょう。もちろんゼンハーモニックでもあります。
構造的には、ある意味で12平均律の曲の音響的レイヤーエフェクトとして17平均律を重ねたものであり、そういう分析もできるために、普段微分音にあまり触れていない方でも把握して楽しみやすいのでは?という狙いも少しはあったのですが、それはそれで新しく面白いアイデアに発展できるのではないでしょうか。
シンセで5度や1オクターブ上下の音などをレイヤー音として鳴らすものはよくありますが、レイヤー音としての微分音のエフェクトはまだあまりないのではないでしょうか。"microtonal effect"とでも定義付けしておきます。
単に17平均律単体のバージョンはこちらです。
Iceface Tuningは50cent高い音をメロディや和音に局部的にぶつけてデチューン、コーラスエフェクト的効果を生むために使用出来る微分音でもあるため、音響効果としての微分音という意味では狙いは似ていました。
近日、清川隼也氏のインタビューも公開します。
予告編として、氏による微分音楽曲集もご紹介しておきます。
Das N -EDOs Klavier(5平均律から24平均律までの微分音ピアノ楽曲集
清川氏による用語解説も豊富な、微分音のメモ帳
https://sites.google.com/site/microtonalmemo/
微分音、ゼンハーモニーの最前線を知りたい方は、英語ではありますがfacebook内の
The Xenharmonic Alliance II
https://www.facebook.com/groups/xenharmonic2/?ref=ts&fref=ts
がオススメです。私はここで多くの情報を仕入れています。(発信もしてます!)
translation and article
翻訳、記事作成
H. Wakabayashi
微分調性とは
先日よりmicrotonal(マイクロトーナル)、 xenharmony(ゼンハーモニー)と言った分野の翻訳を本格的に始めましたが、それらの訳語としての日本語がまだしっかりとは確立されていないのではないかと感じました。
microtonalの日本語が厳密には微分音とはならないのではないかとは、以前より微分音のメモ帳を運営されている清川隼也氏も指摘されていたのですが、この際私自身が作曲や翻訳で使用するための、微分音関連の訳語をきっちり定めおきます。
ここでの翻訳にも今後混乱がおこらないように。
昨日Jacob Anthony Bartonが熱心に語るゼンハーモニーという言葉について、訳注で以下のように述べました。
(Xenhamony)とはIvor Darregによるmicrotonalのための用語。
古代ギリシャ語の xenia"hospitable," "xenos"(foreign)という言葉から採られているそうです。
microのtonal(調整)という意味合いが含まれないこともあり、こちらの言葉が好まれることも多いです。
日本語の微分音は厳密にはmicrotoneには当てはまっても、microtonalには当てはまらないかもしれません。
microtonalでは微分調性という意味を含みうるため、伝統的な調性内における微分音の使用が、microtonalと
呼べるのかは、議論の分かれるところでしょう。本ブログでは、所々で一番相応しいと判断した訳語を使用します。
この"微分調性"という言葉はこれまで私が使用する以外で見たことはなかったのですが、微分音を用いた12平均律以外の調性という意味で使用しています。ハ長調、Cのキーの中にD♭m7(50cents up)といった和音がコード進行、機能和声として組み込まれている場合、これはもはや微分調性と言えるでしょう。微分音の使用が旋律だけでなく、調性にも影響を及ぼしますから。
ちなみに12平均律以外の平均律(1オクターブを12以外の均等な数に配置した9平均律、15平均律や17平均律など)はn平均律と日本語訳で定義されており(ですよね、清川さん??)、これは前述の清川氏によるものです。微分調性の場合は平均律であるとは限りませんので、単に微分ハーモニー的な和声システム、コード進行を持った調性という意味であり、microtonalとはどんなtonal(調性)なのかと問われると、微分調性です!というわけです。一つの平均律の楽曲の中で突然局部的に純正律やらピタゴラス音律が出てくるとか、それがハリーパーチの43音階でもよいのですが、そういうものは微分調性的ととらえられるかもしれませんね。いや、これは微分調律的、かな?
なおゼンハーモニーという言葉は、調性の定義云々やその数学的な部分よりは、響きが異質で、非西洋的であるという、あえて言うならば人文学的な意味合い、憧れが大きく由来となっているでしょう。
レイヤーエフェクトとしての微分音
私自身の楽曲を例にあげて恐縮ですが、微分音を西洋の調性、コード進行に簡単に取り込むことを目的として考案したIceface Tuning(♯や♭の音を全て50centsあげて経過音、装飾音として使用する)は基本的には12平均律といった調性内での使用を前提に提唱しましたので、ゼンハーモニック(名詞であるゼンハーモニーの形容詞)ではあっても、マイクロトーナル、微分調性的とはあまり言えないということになりますね。
Iceface Tuned Piano 微分音を簡単に楽曲に組み込む方法
それに対して
Microtonal Arpeggio for 2 Pianos (12+17 Tone Equal Temperament)2台のピアノのための微分音アルペジオ
こちらの楽曲は12平均律と17平均律が同時に奏でられるため、少なくとも17平均律の部分はマイクロトーナル、微分調性であり、かつn平均律であるということになります。全体的にはマイクロトーナル、、微分調性の楽曲となるでしょう。もちろんゼンハーモニックでもあります。
構造的には、ある意味で12平均律の曲の音響的レイヤーエフェクトとして17平均律を重ねたものであり、そういう分析もできるために、普段微分音にあまり触れていない方でも把握して楽しみやすいのでは?という狙いも少しはあったのですが、それはそれで新しく面白いアイデアに発展できるのではないでしょうか。
シンセで5度や1オクターブ上下の音などをレイヤー音として鳴らすものはよくありますが、レイヤー音としての微分音のエフェクトはまだあまりないのではないでしょうか。"microtonal effect"とでも定義付けしておきます。
単に17平均律単体のバージョンはこちらです。
Iceface Tuningは50cent高い音をメロディや和音に局部的にぶつけてデチューン、コーラスエフェクト的効果を生むために使用出来る微分音でもあるため、音響効果としての微分音という意味では狙いは似ていました。
近日、清川隼也氏のインタビューも公開します。
予告編として、氏による微分音楽曲集もご紹介しておきます。
Das N -EDOs Klavier(5平均律から24平均律までの微分音ピアノ楽曲集
清川氏による用語解説も豊富な、微分音のメモ帳
https://sites.google.com/site/microtonalmemo/
微分音、ゼンハーモニーの最前線を知りたい方は、英語ではありますがfacebook内の
The Xenharmonic Alliance II
https://www.facebook.com/groups/xenharmonic2/?ref=ts&fref=ts
がオススメです。私はここで多くの情報を仕入れています。(発信もしてます!)
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H. Wakabayashi
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